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養育費の合意を公正証書にするメリット| 養育費請求・強制執行なら養育費の弁護士無料相談 - 名古屋市・愛知県

養育費の取り決めを公正証書にするメリットはなんですか。

A.養育費の取り決めを公正証書にしておくことの最大のメリットは、将来、相手がもし養育費をはらってくれないようになってしまったとしても、給料の差押えなどの強制執行が安価・迅速にできるため、回収がしやすい点です。
また、相手もそのことを前提にできるだけ払ってくれるようになることから、履行の確実性が高まるといえます。その他、証明力が高く、紛失のおそれがないというメリットもあります。

 

弁護士 本田昭夫
弁護法人中部法律事務所名古屋事務所所属

 

解説

1.公正証書とは何か

(1)公証人が作成する文書

公正証書とは、さまざまな契約や遺言などの法律行為について、法務大臣が任命した公証人が、当事者の依頼によって作成する文書です。

(2)公正証書を利用できる場面

離婚の際の協議や、その一部である養育費に関する取り決めも、一種の契約であり、公正証書にすることができます。

基本的には、法令違反、公序良俗違反、無効などの問題がない限り、どのような合意でも公正証書にすることができます。養育費のみの公正証書、離婚後に作る公正証書、前の合意を変更する公正証書、未婚で生まれた子供の養育費についての公正証書も可能です。

 

2.公正証書にするメリット

取り決めの内容を自分たちだけで文書にしておく場合に比べて、公正証書にした場合のメリットは、いくつかあります。

(1)証明力が高い

まず、公正証書は法律の専門家である公証人が法令によって作成する公文書であること、さらに作成する際には本人確認を行い、内容も当事者の意思を確認して作られていることから、信用性が高く、当事者がこのような約束をしたという事実を証明するための証明力が高いです。

こんな契約書作った覚えはないとか、紙にはこう書いたけれども本当は違うつもりだったとか、相手が後から勝手に書き加えたのだ、など、文書の信用性に関するトラブルはいろいろ考えられますが、公正証書ならばそれらを予防できます。

(2)紛失のおそれがない

公正証書は公証役場に原本が保管されることになっているため、保管期間中であれば、万が一、手元の公正証書正本を失くしてしまっても再発行を受けることができます。

(3)強制執行できる効力を付けられる

お金を支払う約束についての公正証書は、債務者(支払う側)がもし約束を守らなかった場合には直ちに強制執行されてもかまいませんと述べる文言(強制執行認諾文言強制執行認諾約款といいます)を入れることで、債務名義の一種である執行証書というものになり、強制執行できる効力(執行力)を持たせることができます。

強制執行認諾文言の例

乙は、本契約による金銭債務を履行しないときには、直ちに強制執行に服する旨を陳述した。

強制執行は、裁判所が債権の内容を強制的に実現するものです。お金であれば相手の財産や給料を差押えるなどしてお金を回収する手続です。この強制執行は必ず債務名義に基づいて行うことになっています。

債務名義は、債権の存在と範囲を公的に証明した文書のことです。執行証書のほか、確定判決や調停調書などが債務名義と定められています。

通常の合意書や契約書では、お金の条項が守られなかったときにはまずお金を払えという訴えを起こして裁判で勝ち、その勝訴判決の確定したものが債務名義となり、やっと強制執行ができます。ところが、執行証書の場合は作った瞬間に債務名義となるのです。

訴えを起こして確定判決を取るための時間と費用が節約できるし、素早く動けることにより回収可能性も上がるので、広く利用されているところです。

養育費もお金の約束ですから、当然、執行証書にするべきです。もしも相手が執行証書を拒否するような場合、それは約束通り払うつもりがないと言っているようなものですから、協議で養育費を決めるのをあきらめ、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることを検討した方がよいかもしれません。

 

まとめ

養育費は、子供の生活と成長を支える大切な資金になります。将来にわたり長年続いていくものなので、確実に払い続けてもらうことが何より重要です。養育費の取り決めを公正証書執行証書)にすることで、相手はしっかり払わなければならないという意識を持つことが期待でき、万一払わない場合にも差押えなどの行動が起こしやすくなります。

 

 

 

 

参考条文

「民事執行法」

(債務名義)

第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

一 確定判決

二 仮執行の宣言を付した判決

三 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)

三の二 仮執行の宣言を付した損害賠償命令

三の三 仮執行の宣言を付した届出債権支払命令

四 仮執行の宣言を付した支払督促

四の二 訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法(平成二十三年法律第五十一号)の規定を準用することとされる事件を含む。)、家事事件若しくは国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成二十五年法律第四十八号)第二十九条に規定する子の返還に関する事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は第四十二条第四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)

五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

六 確定した執行判決のある外国裁判所の判決(家事事件における裁判を含む。第二十四条において同じ。)

六の二 確定した執行決定のある仲裁判断

七 確定判決と同一の効力を有するもの(第三号に掲げる裁判を除く。) 

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