相手の勤務先会社が、差押債権者に対する任意の支払いを拒否してくるケースは残念ながらあります。しかし、法的には支払い義務を負っており、任意に払わない場合には取立訴訟と強制執行により、強制的に回収することができます。
1.給料の差し押さえの仕組み
給料の差し押さえは、養育費を払わない相手が自分の勤務先の会社に対して持っている「給与債権」に対する強制執行です。まず「差し押さえ」により、相手は会社から給与(差し押さえた部分)を勝手に受け取ってはいけなくなり、会社も相手に支払ってはいけないという効果が生じます。
そして、差し押さえてから一定期間(養育費の場合は、相手に債権差押命令が送達された日から1週間)が経過すると、差し押さえ債権者は、会社から「取り立て」ることができるようになります。すなわち、差し押さえ債権者は、直接会社に請求し、支払いを受けることができます。
2.会社による支払い拒否の可能性
取立権が発生したら会社に連絡し、具体的な支払い方法などを協議して支払いを受けるのが通常の流れです。たとえば養育費の場合、今後の給与支払いのたびに養育費の額(差し押さえ債権額として差し押さえ命令に記載されている額)を、振込手数料を差し引いて請求権者の指定する口座に振り込んでもらう、などです。
しかし、中にはこのような協議に応じない会社もあります。法的な取立権が発生するということと、会社がそれを任意に履行するかどうかは別問題です。小規模で経営者と従業員の関係が密接な会社などでは、経営者が従業員の味方をして、支払いを拒否するケースも現実にはあります。
3.支払い拒否への対処法ー取立訴訟
差し押さえた給与債権が会社から差し押さえ債権者に支払われない場合、差し押さえ債権者は、その支払いを求める訴えを提起することができ、これを取立訴訟といいます。
有効な差し押さえにより取立権が発生していることを立証できれば、会社側で反論できる事情のない限り、会社に対し、支払いを命ずる判決が出ます。それでも支払わない場合には、その判決を債務名義として今度は会社の財産に対して強制執行を行うことで、回収ができます。