大まかに言うと次のようになります。
審判の開始(通常は調停不成立からの移行)
↓
審理(期日が開かれない場合もある)
↓
審理終結
↓
審判
↓
審判の確定・終了
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審理(期日が開かれない場合もある)
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審理終結
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審判
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審判の確定・終了
解説
1.審判とは
審判(家事審判)とは、家庭裁判所による裁判手続きです。
審判は調停と異なり、当事者の合意ではなく裁判所の判断による強制的な紛争解決制度です。一方、一般の民事訴訟とも次のような点で異なります。
一般の民事訴訟の場合、当事者が主張していないことを勝手に考慮しない、当事者が出していない証拠を勝手に調べないというルール(弁論主義)があり、裁判所は法廷に出された証拠から事実を認定し、法律を適用して当事者の主張に対する判断を下すという方式で行われます。また、手続きの公正さなどを国民が監視できるように、公開法廷で行うことが要請されています。
これに対し、婚姻や相続など家庭の問題を取り扱う審判手続では、裁判所はより積極的に問題に介入し、具体的に妥当な解決を作っていく役割を果たします。そのため、家庭裁判所は当事者の主張に拘束されず、職権による調査によって事実関係を把握します。また、手続きは非公開で行われます。
2.養育費の審判の流れ
(1)審判の開始
養育費の取決めを行いたいとき、当事者どうしでの話し合いが難しければ調停を申し立てるのが一般的ですが、いきなり審判を申し立てることも可能です。したがって、養育費の審判は申立てで開始する場合と、調停不成立からの移行で開始する場合とがあります。実務上は調停不成立からの移行がほとんどです。
調停申立てを経ずに審判を申し立てた場合、家庭裁判所は通常、職権で調停に付します。付調停による期日の空回りを避けるためには、調停での合意の見込みが非常に低いことを疎明するなどの工夫が必要です。
養育費の審判の申立ては、申立書を提出して行います。申立書には、たとえば「『相手方は、申立人に対し、令和〇年〇月から■■が20歳に達するまでの間、〇万円を毎月末日限り支払え。』との審判を求める。」などの形で、求める審判の内容を記載します。
(2)審理
審判では、期日が必ず開かれるとは限りません。審判に必要な資料の収集は「事実の調査」によって家庭裁判所が柔軟に行うことができ、必ずしも期日を開く必要がないためです。
ただし、養育費の審判では当事者双方の陳述を聴取することが必要とされており、その手続きは当事者が申し出をすれば期日で行わなければならないこととされています(申し出がなければ書面による照会などの方法が用いられます。)。
その他、当事者が証人尋問などの証拠調べを申し立てる権利も認められています。このような場合には期日が開かれることになります。
(3)審理の終結
養育費の審判では、審理終結の日が指定されます。その時までに当事者は自分の立場から必要な資料を出し尽くす必要があります。
(4)審判
審理が終結すると審判日が指定されます。しかし審判日といっても期日が開かれるわけではなく、審判書の郵送など相当な方法で当事者に審判が告知されます。
養育費の審判の内容は、基本的に、相手方に養育費の支払いを命じるものか、申立人の申立てを却下するもののいずれかとなります。
(5)審判の終了
審判に対して当事者双方が不服を申し立てず、審判の告知を受けた日から2週間が経過すれば、審判が確定して手続きは終了します。
他に、審判手続が終了する原因としては、申立人による取下げ、付調停からの調停成立、当事者の死亡があります。
養育費の支払いを命じる審判が確定すると執行力という効力が発生し、給与差押えなどの強制執行が可能となります。
(6)不服申立て
審判に対する不服申し立ては即時抗告という手続きで行います。即時抗告できる期間は、審判の告知を受けた日から2週間以内です。抗告状は原裁判所(審判を行った家庭裁判所)に提出します。
抗告却下の場合を除き、原裁判所から高等裁判所に事件が送付され、抗告審の審理が行われることになります。