A: 家庭裁判所の養育費の審判に不服がある当事者は、高等裁判所に即時抗告をすることができます。即時抗告の期限は2週間です。
解説
1.審判に対する不服申立手続
各種の裁判に対して不服を申し立てることができるか、誰がどのような手続きで申し立てるべきかは、法律によりそれぞれ定められています。
家庭裁判所の家事審判については、審判の種類ごとに特に定めのある場合に限り、即時抗告による不服申立てができると定められています(家事事件手続法85条1項)。
2.養育費の審判に対する即時抗告
養育費の審判は、条文上は「子の監護に関する処分の審判」という名称になります。
「子の監護に関する処分の審判」および「その申立てを却下する審判」に対しては、「子の父母」および「子の監護者」から即時抗告ができると定められています(同法156条4号)。
即時抗告の対象となる審判:
・子の監護に関する処分の審判
・その申立てを却下する審判
即時抗告申立権者:
・子の父母
・子の監護者
「子の監護に関する処分の審判」には、養育費の請求を認めて義務者に支払いを命じる審判や養育費の額を変更する審判が含まれます。「その申立てを却下する審判」とは、養育費の請求を却下する審判や、減額請求を却下する審判のことです。「子の監護者」とは、離婚時の監護者指定などにより、父母以外の監護者(たとえば祖父母など)が定められている場合のその監護者のことです。
3.即時抗告の期限
審判に対する即時抗告は、2週間の不変期間内にしなければなりません(86条1項)。
不変期間とは、裁判所の裁量で伸長・短縮することができないという意味です(民事訴訟法96条1項)。2週間の起算日は審判の告知を受けた日ですが(家事事件手続法86条2項)、初日不算入のため(民法140条)翌日を1日目と数えて14日間で満了します。たとえば6月14日に審判の告知を受けたとすれば、即時抗告できるのは6月28日までとなります。
4.即時抗告申立ての方法
即時抗告の申立ては、審判を行った家庭裁判所に対して抗告状を提出して行います。
抗告の当事者は「抗告人」と「相手方」ですが、この「相手方」は原審判とは逆になることもあります(原審判の相手方が即時抗告を申し立てた場合には、即時抗告の相手方は原審判の申立人となる)。
抗告状には、抗告の趣旨として、原審判の取り消しを求める旨と、代わりに求める判断の結論を記載します。
抗告の具体的な理由(原審判の誤りや不当な箇所など)も必要ですが、抗告状に記載することが必須ではなく2週間以内に追って提出することも可能です(家事事件手続規則55条)。
調停や審判の申立てと同様に、費用を収入印紙の形で納める必要があります。養育費の審判に対する即時抗告の費用は1800円です(民事訴訟費用法3条1項、別表第一18(1))。
また、抗告状の写しも必要です(家事事件手続規則54条)。
5.即時抗告申立て後の流れ
即時抗告が受理されると、原則として相手方に抗告状の写しが送付されます(家事事件手続法88条)。抗告状に不備があって是正されないなど例外的な場合を除き、事件が元の家庭裁判所からその上級の高等裁判所へ送付されます。名古屋家庭裁判所であれば、名古屋高等裁判所が管轄となります。
養育費の審判に対する即時抗告の場合、抗告審でも原則として両当事者の陳述を聴く機会が設けられます(同法89条2項)。審理の結果、抗告に理由がなく、原審判が相当だと認める場合には抗告棄却の決定となります(同法91条1項)。抗告に理由があると認める場合には原審判が取り消され、原則として抗告裁判所が「審判に代わる裁判」により判断を下します(同条2項)。