A: 養育費には所得税がかからないので、毎月受け取っている人は申告の必要はありません。ただし、一括で受け取った場合などには贈与税がかかる可能性があります。
養育費を支払っている側の人は、その子供について扶養控除の申告ができる可能性がありますが、一定の条件を満たす必要があります。
解説
1.養育費と所得税
養育費は所得の一種ですが、所得税のかからない「非課税所得」とされています。非課税所得は所得税法9条1項1号~18号に列挙されており、養育費はそのうち15号の後段「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」に当たります。未成熟子に対する扶養義務は離婚した後も父母双方が負っており、その間で子供と一緒に暮らさない親から一緒に暮らす親へ、子供に対する扶養義務を果たすために支払うお金が養育費だからです。
ただし、養育費を一括で受け取った場合や、過大な金額を受け取っている場合には贈与税がかかる可能性があります。
詳しくはよくあるご質問「養育費をもらったら税金はかかりますか」をご覧ください。
2.養育費と扶養控除
(1)扶養控除とは
扶養控除とは所得控除の一種です(所得税法84条)。所得控除とは一定の支出や障害、扶養義務などの個人的な事情を加味して所得税額を低くする制度です。所得税は所得額に一定の税率をかけて算出されますが、所得控除が適用される場合には所得額から一定の金額が差し引かれることにより、結果的に税額が下がる仕組みです。
(2)扶養控除の条件と控除額
扶養控除の条件は、納税者に「控除対象扶養親族」となる人がいることです。具体的な判定基準は次のとおりです。
①扶養親族に該当すること(所得税法2条1項34号)
扶養親族の条件:以下のすべてに該当すること
(ア)配偶者以外の親族または里子/養護受託老人
(イ)納税者と生計を一にする
(ウ)年間の合計所得金額が48万円以下
(エ)青色申告の事業専従者として給与を受けていないまたは白色申告の事業専従者でない
②扶養親族が16歳以上であること(所得税法2条1項34号の2)
いずれも判定基準日は申告にかかる年の12月31日です。
この条件を満たす場合、その控除対象扶養親族1人につき38万円の所得控除を受けられます。ただし、次の一定の場合には控除額が上乗せされます。
・控除対象扶養親族が19歳~22歳の場合 控除額63万円
・控除対象扶養親族が70歳以上で同居老親等である場合 控除額58万円
・控除対象扶養親族が70歳以上で同居老親等でない場合 控除額48万円
(3)養育費を支払っている場合に扶養控除が適用されるか
まず、子供が上記の控除対象扶養親族に該当するかどうかの確認をします。上記①(ア)の「生計を一にする」とは必ずしも同居している必要はなく、別居していても常に生活費や学費などを送金している状況であれば該当するとされています。したがって、養育費を毎月支払っており、子供が16歳以上であり、アルバイトなどで年48万円を超える所得を得ていなければ、通常は該当することになります。
ただし、子供と一緒に暮らしている方の親も原則として子供と生計を一にしていることになるため、同じ子供が養育費を支払っている側と受け取っている側の両方にとって控除対象扶養親族に該当することになります。この場合、扶養控除を申告できるのはどちらか一方です(所得税法85条5項)。その優先順位は基本的には早い者勝ちであり、もしもそれで決まらない場合には所得の大きい方の扶養親族となるというルールがあります(所得税法施行令219条)。
(4)扶養控除の申告の方法
サラリーマンの場合、年末調整の際に勤め先から渡される扶養控除申告書に必要事項を記載することで申告できます。
自営業の場合、確定申告の所得控除欄に自分で必要事項を記載する必要があります。