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離婚し、元夫から養育費を受け取っています。私が再婚すると、養育費はどうなりますか。再婚相手と子どもが養子縁組した場合はどうですか。

再婚しただけで養子縁組をしなければ、原則として養育費の金額は変わりません。一方、養子縁組をした場合には、第一次的に養親である再婚相手が子どもを扶養すべきことになるので、原則として、元夫に対し養育費を請求できなくなります。ただし、再婚相手が子どもを十分に扶養できない場合には、元夫に対し、養育費を請求できる可能性があります。
弁護士 本田昭夫
弁護法人中部法律事務所名古屋事務所所属

1.元妻の再婚と養育費の支払義務

養育費の権利者(もらう側)が再婚した場合に養育費がどうなるかは、再婚相手と子どもが養子縁組をするかどうかで分けて考える必要があります。

以下、元妻が権利者であり元夫が義務者であるケースを念頭に解説しますが、男女が逆であってもまったく同様です。

2.養子縁組する場合

(1)元夫と再婚相手の優先順位

養子縁組は法律上の親子関係を発生させるものであり、養親は実親とまったく同じように子どもに対する扶養義務を負うようになります。

この両者の扶養義務の優先順位については、養親が優先すると解されています。つまり、基本的には養親だけで子どもを扶養すべきだということになります。

判例も次のように述べています。

東京高裁平成30年3月19日決定
「夫婦間の関係及び親の未成熟子に対する関係では,扶養することがその身分関係の本質的要素となすことから,その間には,相手方に自己と同程度の生活を維持する義務(生活保持義務)があるとされている。

ところで,実母の再婚相手と未成熟子が養子縁組をした場合には,養父となった者は,当該未成熟子の扶養を含めて,その養育を全て引受けたものであるから,実母と養父が,第一次的には,未成熟子に対する生活保持義務を負うこととなり,実父の未成熟子に対する養育費の支払義務はいったん消失するというべきであり,実父は,未成熟子と養父の養子縁組が解消されたり養父が死亡したりするなど養父が客観的に扶養能力を失った場合等に限り,未成熟子を扶養するため養育費を負担すべきものと考えるのが相当である。

そして,実父母が未成熟子に対して生活保持義務を負っている場合に,実父が未成熟子の養育費を負担するときであっても,例えば,実父及び実母の収入が著しく低額であるような場合には,養育費を含めても実母及び未成熟子の世帯収入が,いわゆる最低生活費を上回らないことがあり得るのであって,養育費の制度は,未成熟子にいわゆる最低生活費を上回る生活費を保障するものではない。」

 

東京高裁令和2年3月4日

両親の離婚後,親権者である一方の親が再婚したことに伴い,その親権に服する子が親権者の再婚相手と養子縁組をした場合,当該子の扶養義務は,第1次的には親権者及び養親となった再婚相手が負うべきものであり,親権者及び養親がその資力の点で十分に扶養義務を履行できないときに限り,第2次的に実親が負担すべきことになると解される。

したがって、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、原則として、元夫に対し、養育費を請求することはできなくなります

(2)養育費免除の始期

それでは、養育費の免除が認められたとして、いつから免除されるのでしょうか。始期としては、①再婚相手と子どもが養子縁組をした時点、②元夫が養育費減額請求調停の申立等の減額を請求した時点等が考えられます。

この点について、上記東京高等裁判所平成30年3月19日決定は、①養子縁組が元妻側に生じた事由であり、養子縁組以降に元夫から養育費の支払を受けられない事態を想定することは十分可能であったこと、②元夫側からすれば養親縁組がされたことを知るまでは養育費の減額調停の申立て等をすることは現実的に不可能であったこと等から、公平の観点に照らして、養育費免除の始期を養子縁組時まで遡らせるとの判断を示しました。

一方、上記東京高等裁判所令和2年3月4日決定は、①元夫は調停申立ての前月まで養育費を支払っており、支払済みの毎月の養育費は合計720万円に上る上、元妻は子どもの留学に伴う授業料も支払っているため、このような状況の下で既に支払われ費消された過去の養育費につきその法的根拠を失わせて多額の返還義務を生じさせることは、元妻に不測の損害を被らせるものであること、②元夫は、元妻の再婚後間もなく、元妻から再婚した旨と養子縁組を行うつもりであるとの報告を受けており、これにより元夫は、以後、子どもに養子縁組がされる可能性があることを認識できたといえ、自ら調査することにより養子縁組の有無を確認することが可能な状況にあったこと等から、元夫が、養子縁組の成立時期等について重きを置いていたわけではなく、実際に調停を申し立てるまでは子どもらの福祉の充実の観点から養育費を支払い続けたものと評価することも可能であるとして、養育費免除の始期を調停申立時とするとの判断を示しました。

以上の二つの裁判例からすると、養育費免除の始期については、個別具体的な事情を考慮の上、元夫が養子縁組の事実を認識又は認識し得たか(減額請求し得たか)、元妻に遡って養育費を返還させることが相当か、等の公平の観点から総合的に判断されるものと思われます。

3.養子縁組しない場合

養子縁組しなければ、再婚相手には連れ子に対する扶養義務はありませんから、養育費には影響しないのが原則です。

しかし、元妻が再婚相手の扶養を受けることになり、その扶養の程度によっては、元妻の収入として見る余地もあります。そして、元夫と元妻との間で著しい不公平が生じる場合には、減額請求が認められる可能性があります。

4.再婚は報告する義務があるのか

離婚の際に再婚の場合の報告義務などを定めていない限り、再婚を報告する義務はありません。養育費の免除をおそれて再婚の事実を隠す人もいるようですが、それ自体は通常違法とはいえません。

もっとも、東京高等裁判所平成30年3月19日決定のように、元夫が、子どもの養子縁組を知らずに養育費を支払い続けていた場合には、養子縁組が発覚した際、養子縁組時点まで遡って多額の返還請求をされる可能性があります。

 

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