家庭裁判所では従来、養育費の計算を簡略にするために標準的算定方式という計算方式を確立し、その方式による計算結果を表にした算定表を作成して、スピーディな養育費紛争の解決に役立てていました。
標準的算定方式では、実際の事案ごとに細かく収入状況や生活費を認定していくのを省略するため、統計データを活用しています。その統計データは時代とともに変動するため、随時新しいものにすることが適切です。従来の算定表は2003年から統計データを更新せずに用いられてきて、実態と離れ始めていました。
そこで、2019年12月に新しい統計データを用いた標準的算定方式が公表され、それに基づく算定表の使用も始まりました。これを新算定表と呼んでいます。
1.標準的算定方式で用いられている統計データ
標準的算定方式では、総収入から基礎収入(生活費に回せる部分)を算定するところと、子供の生活費は大人の生活費の何%分が必要かを算定するところの2箇所において、統計データを用いています。
こうすることで、個々の事案ごとの具体的な数字を証拠から認定する手間を省き、審理の迅速化を目指しています。
①基礎収入割合
手取り収入から税金や社会保険料、職業上の経費、生活の基盤として固定的に必要な支出を除いた残りが、生活費に回せる部分です。これら控除する項目について、それぞれが収入の何%に当たるか、公租公課については法令、その他については総務省統計局が公表している統計データを用いて平均値を求めています。それらを合計したのが基礎収入割合となります。
収入額の大小によって平均値も変わるので、それも勘案できるように上限と下限で示された幅のある数値となっています。給与所得者、自営業者とも、収入額が上がるほど基礎収入割合は低くなります。実務では収入額に応じて幅の中から適用すべき基礎収入割合を決定しています。
②生活費指数
標準的算定方式では義務者の基礎収入を義務者の分と子供の分とに按分(割合的に分割)します。その際、子供の分としてどのぐらいの割合を分けるべきなのかは、子供の生活費がどのぐらいかかるのかによります。そして子供の生活費は年齢や教育段階などによって異なります。
標準的算定方式では、生活保護基準を用いて子供に最低限必要な生活費を求め、さらに年齢を14歳以下と15歳以上に二分し、前者については公立中学校の教育費の統計データ、後者については公立高校の教育費の統計データを用いて平均的な教育費を算出しています。その合計を大人の生活費と比べ、それぞれ大人を100とした場合の数値として示し、これを按分計算に用います。
計算方法の詳細については、養育費のよくあるご質問「養育費の計算方法を教えてください。」を参照してください。
2.統計データ更新による新旧算定表の違い
新算定表になったことによって、上記の各項目の数値がどのように変わったかをまとめます。
①基礎収入割合 |
旧算定表 |
新算定表 |
||
給与所得者 |
42〜34% |
54〜38% |
||
公租公課 |
12〜31% |
8〜35% |
||
職業費 |
20〜19% |
18〜13% |
||
特別経費 |
26〜16% |
20〜14% |
||
自営業者 |
52〜47% |
61〜48% |
||
②生活費指数 |
||||
0歳〜14歳 |
55 |
62 |
||
15歳以上 |
90 |
85 |
基礎収入割合については、いずれも増加しています。生活費指数は、14歳以下については増加、15歳以上については低下しています。このことから、全体としては養育費は従来より増額となる傾向にあるものの、ケースによっては逆に減額となることもあるといえます。
ただし、この新算定表だけを理由にして養育費の増減額を請求しても認められません。ほかに客観的事情があって養育費の変更が認められる場合には、新算定表が用いられることになります。
- 養育費算定表についてさらに詳しく知りたい方は養育費の弁護士コラム:「養育費算定表とは?養育費算定表の見方を弁護士が解説します。」をご覧ください。
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