当事者間に合意が成立する見込みがない場合です。
合意が成立する見込みがない場合には、当事者の主張が食い違って歩み寄りの余地がない場合のほか、当事者の一方が期日に出頭しない場合も含まれます。
解説
1.調停不成立の要件
家事事件手続法272条1項により、調停委員会は次の場合に「調停が成立しないもの」として調停を終了させることができます。これを「不成立」といいます。
①当事者間に合意が成立する見込みがない場合
②成立した合意が相当でないと認める場合
2.養育費の調停が不成立となる例
①合意成立の見込みがない場合の例
たとえば、養育費を請求している側が月額5万円の養育費の支払を求めているのに対し、養育費を請求された側が月額1万円しか払えないと主張している場合のように、双方の主張に開きがあってお互いに譲らない場合には、合意成立の見込みがないと判断される可能性が高いといえます。
また、相手方が期日に出頭しない場合にも合意成立の見込みがないと判断されます。ただ、日時の都合によって来られない可能性もあるため、1回目の期日では不成立の判断をせず、2回目も不出頭ならば不成立にするという運用が一般的です。
②合意が相当でない場合の例
文献によれば合意が相当でない場合の例として、法令違反や公序良俗違反などが挙げられています。しかし、実務上、合意が相当でないとして不成立とする例は殆ど見当たりません。
3.調停不成立の手続き
調停委員会が不成立の判断をすると、ただちに調停手続は終了し、家庭裁判所から当事者に対しその旨が通知されます(家事事件手続法272条2項)。
この不成立の判断に対し、不服申立てはできません(取り下げて再度調停を申し立てることは可能ですが、再度不成立にされる可能性もあります)。
4.調停不成立の効果(審判への移行)
養育費の調停が不成立で終了した場合には、特段の行為を要することなく、調停申立ての時に審判申立てがあったとみなされ、自動的に審判手続が開始します(家事事件手続法272条4項)。
なお、離婚調停など人事訴訟の対象となる事件の調停の不成立は、自動的に人事訴訟に移行することはありません。自動的に審判に移行する事件は、家事事件手続法の「別表第二」に掲げられている事件です。養育費のほか、婚姻費用分担、面会交流、親権者指定なども別表第二に含まれます。
5.調停と審判の違い
調停は当事者の合意による解決を目指す手続きであるのに対し、審判は裁判所の判断による解決を図る手続きです。
そのため、審判では、裁判所は、積極的に事実を調査し、当事者が納得していなくても法に基づいて判断を下します。