A. 養育費は減額される可能性があります。
再婚相手に子供がいない場合でも、収入がなく元夫の扶養を必要とする状態であれば、養育費が減額となることがあります。
連れ子と養子縁組をした場合には、扶養義務が生まれるため、減額の可能性が高いです。もっとも、離婚から再婚までがあまりにも短いと、事情変更だと認められず、元夫からの養育費減額請求が却下されることもあります。
解説
1.元夫の再婚と養育費の減額
養育費を支払う側(義務者)が再婚した場合に養育費がどうなるかについては、再婚によって義務者が扶養すべき人が増えたかどうかで結論が分かれます。また、そもそも再婚が事情変更と認められるかどうかという問題もあります。
以下、義務者が元夫であり、権利者が元妻であるケースを想定して解説しますが、男女が逆であってもまったく同じです。
2.元夫の再婚で養育費が減額される理由
(1)基礎収入を分け合うという考え方
養育費には決まった計算式があり、裁判所が養育費を決める場合にはそれに従っています。その計算結果を表にして使いやすくしたものが算定表です。
その算定表の計算の考え方の重要な部分が、「義務者の基礎収入を子供と義務者で分け合うとしたら子供の生活費分はいくらになるかを算出する」というものです。親は子供を扶養する義務があるので、財産を分け合うのです。
その扶養すべき相手が増えると、分け合う人数が増えることになります。分数の分母が増えるため、養育費の対象となる子供の取り分は減るというわけです。
算定表の考え方について詳しくは、「養育費の弁護士コラム:養育費算定表とは?養育費算定表の見方を弁護士が解説します。」をご参照ください。
(2)再婚によって増える扶養義務
①再婚相手に対する扶養義務
夫婦の間には協力扶助義務があり、互いに扶養義務を負っているので、再婚によって自動的に再婚相手に対する扶養義務が発生します。しかし、子供と違って働いて収入を得ていることも多く、自分が生活していける程度の収入があればその扶養義務は顕在化していないので、養育費の計算には入れなくてよいとされています。
収入がない場合は現実に扶養が必要なので、養育費は減ります。しかし働けるのに働いていない人については、賃金センサスなどを使って一定の収入があるものとみなすこともあります。ただ、乳幼児の子育て中などの事情があって無職や低収入がやむを得ない場合はそのようにみなしません。
②養子縁組した連れ子に対する扶養義務
養子縁組は法的な親子関係を発生させるので、扶養義務が生まれ、養育費は減ります。
③再婚相手との間に生まれた実子に対する扶養義務
当然扶養義務があるので、養育費は減ります。
3.元夫の再婚が事情変更にならないケース
以上はあくまでも、事情変更が認められて養育費の変更ができる場合の結論です。
しかし、場合によっては、そもそも事情変更が認められないことがあります。
元夫が養育費を定めた時点で再婚や扶養すべき子の増加を予定していた場合等は、再婚後間もなくこれらの事由が生じたとしても、養育費の減額をすべき事情変更とはいえません。
もっとも、その後相当期間が経過した場合は、元夫がいつまでも再婚しないことを期待することはできないわけですから、再度減額請求すれば、改めて事情変更と認められることもあります。
- 養育費を請求されたい方、公正証書を作成されたい方、調停を申し立てたい方は、名古屋の弁護士法人中部法律事務所の養育費の請求・調停のサービスをご覧ください。
- 養育費のご請求について、弁護士による初回無料の法律相談を実施しております。詳しくは無料法律相談の流れをご覧ください。