家庭裁判所の審判で養育費の増額が認められる可能性があるのは、当初の養育費を決めた時には予測できなかった事情の変更があり、そのために増額を認めなければ著しく不公平となるような場合です。たとえば、相手の大幅な収入増、自分の大幅な収入減、子供の大学進学、子供の病気などが増額の理由になる可能性があります。
目次
1.養育費を増額するための手続き
養育費は一度決まった後に変更することができます。合意できれば合意(または調停)で、合意ができなければ家庭裁判所の審判で行います。審判の場合には事情の変更が認められる必要があります。
これらの手続きや変更の条件について、詳しくは「よくある質問:養育費の金額を変更することができますか」をご参照ください。
2.増額の理由になりうる事情
(1)相手(義務者・支払う側)の収入増加
養育費はお互いの経済力に応じて子供にかかる費用を分担するものです。相手の収入が上がるということは、分担する力も上がるということで、それに応じて分担割合も高くしないと不公平だという場合もありえます。
ただし、勤務を継続していればある程度の収入増は見込めるのが通常といえるので、当初予測していなかったと言える場合は限られると思われます。諸事情から見て予測の範囲を超えた収入増があり、そのままでは著しく不公平だといえることが必要です。
(2)自分(権利者・受け取る側)の収入減少
同様に、自分の収入減少が予測の範囲を超えており、そのままでは著しく不公平となる場合には、養育費の増額の理由となりえます。
しかし、必ずしも実収入の減少がイコール収入の減少といえるわけではないことに注意が必要です。働けるのに働かないで収入が減少した、と主張するケースも考慮しなくてはいけないためです。このようなケースについては、この程度は働いて稼げるはずだといえる金額が収入として認定されるので、結局収入は減少していないと判断される可能性があります。
(3)子供の教育費の増加
算定表で求める養育費には、公立中学・公立高校の学費相当分の教育費しか含まれていません。子供が私立高校に進学した、大学に進学した、塾や習い事に費用がかかるようになった、などの事情により、算定表の教育費では足りなくなることがあります。
これらは事情変更であるかどうかという問題と同時に、養育の方針として考えて義務者に分担させるのが相当かどうかという観点でも判断されます。
つまり、①当初の養育費にその教育費増額分も見越して含めていたのかどうか、②義務者がその教育内容に同意していたか、同意していなくても義務者の教育歴や生活レベルに照らして相当な教育内容といえるか、のいずれも肯定されなければ増額は認められません。
(4)子供の病気等
子供の疾患や身体障害などにより通常より多くの医療費が継続的にかかることになったり、発達障害の判明により監護親の稼働が難しく収入が減少したといった事情があれば、増額の理由になりえます。
3.増額を求める際の注意点
(1)これまでの経過年数や履行状況等が考慮されることがある
増額は「そのままの金額では著しく不公平といえるか」という総合的な判断を伴うため、単に双方の収入や支出の変動だけではなく、これまでの経過年数や支払金額、履行状況等が考慮されることがあります。
とくに、これまで義務者が負担しすぎだったといえる場合には、それを考慮して増額請求が却下されることもあります。たとえば、合意で決めた算定表より大幅に高い額を長年払ってきている場合や、再婚等の事情により減額が認められるはずなのに減額を求めずに払ってきた場合などには注意が必要です。
(2)当初の養育費の金額が算定表より高い場合には認められにくい
審判で増額が認められる場合、増額後の金額は基本的に算定表に基づいて決めます。そのため、当初の金額が算定表を超えている場合、増額しても金額が上がらないことになります。そのような場合にはそもそも増額を認める理由がないとして却下されることがあります。
(3)新算定表は増額の理由にならない
2019年12月から実務で用いられている養育費の新算定表によると、同じ収入で計算した場合に旧算定表よりも若干養育費の金額が高くなることが多いです。しかし、このことは事情変更に当たりません。算定表が新しくなったことだけを理由に増額請求しても、却下されます。
ただし、ほかに増額の理由があって、増額が認められる場合の計算には新算定表が適用されます。
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