A.夫婦で合意ができるならば、算定表より高い金額でも有効に取り決めることができます。合意はできず、家庭裁判所の審判によらなければならない場合、通常は算定表の金額の枠を超えることはありません。
しかし、算定表の金額では著しく不公平になるような特別の事情がある場合には、例外的に算定表より高い金額が認められることもあります。そのような事情になりうるものとしては、教育費や医療費が挙げられます。
解説
1.算定表の使い方、使われ方
(1)当事者どうしの合意ができる場合
離婚に向けて、夫婦で話し合いができる状態であり、子供の養育費についてもお互いの納得できるラインを探れるようであれば、算定表は参考として用いればよいものです。必ずしも算定表の金額の枠にこだわる必要はありません。
(2)家庭裁判所が養育費を決める場合
当事者どうしで養育費の合意ができなければ、家庭裁判所に審判を申し立てて、裁判所の判断で決めてもらうことができます。
裁判所は、法律に基づいた妥当な養育費を算出するために一定の計算方式を採用しており、その計算結果が算定表なので、基本的に算定表の金額の枠内で判断を出します。
家族のあり方は千差万別で、さまざまな事情を抱えているものですが、そうした個別の事情を考慮できるように、算定表では上限と下限を示した幅のある金額となっているのです。したがって、個別の事情が認められても、それが通常の範囲内と言える場合には、算定表の枠内で考慮されるだけとなります。
しかし、通常の範囲を超えた特別の事情が認められ、算定表の金額の枠内では著しく不公平となるような場合、算定表を修正して枠を超えた金額を認めることもあります。
2.算定表より高い金額が認められる「特別の事情」の例
(1)教育費
算定表による養育費には、公立中学ないし公立高校にかかる学費がすでに考慮されています。しかし、これを超える学費がかかる事情があり、義務者がこれを分担しないと著しく不公平だと言える場合には、分担分を算定表の金額に加算した額が認められることがあります。
義務者が分担すべきとされるのは次のような場合です。
・義務者がその教育を承諾していた場合(黙示も含む)
・義務者の収入、学歴、地位などに照らしてその教育が不合理と言えない場合
学費が高額となる事情には次のようなものがあります。
・私立学校(幼稚園~大学まで)
・塾
・大学
いずれも、実際にかかる額から算定表で考慮済みの公立校の費用を引いた差額を夫婦で分担(半々とされることが多い)するのが基本です。ただし、大学については、お子さん自身もアルバイトや奨学金で一部まかなうべきと判断される場合もあり、その場合、養育費の増額分はそれだけ少なくなります。
- 養育費と大学の学費については、「養育費のよくあるご質問:大学の学費や入学金は払ってもらえますか」もご参照ください。
(2)医療費
医療費も、統計から出した平均的な金額が算定表の中ですでに考慮されています。子供にかかる医療費で、この考慮済みの金額を超える分については、養育費の増額要素として考慮すべきだとされています。
たとえば、子供に継続的な治療を要する持病があり、高額な医療費の発生が確実に予想されるような場合には増額されると思われます。
医療費についての義務者の分担割合は、基礎収入の額に応じたものとされます。
- 養育費算定表についてさらに詳しく知りたい方は、養育費の弁護士コラム:「養育費算定表とは?養育費算定表の見方を弁護士が解説します。」をご覧ください。
- 養育費算定表に基づいた養育費を取り決めたい方、公正証書を作成されたい方は、名古屋の弁護士法人中部法律事務所の養育費の請求・調停のサービスをご覧ください。
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