A.調停調書や公正証書等の債務名義がある場合、相手が所有する不動産を差し押さえることができます。住宅ローンが残っていても、不動産の価値が住宅ローンの残額を大幅に上回る場合には、差し押さえることができます。
ただし、不動産の差し押さえは、給料や預貯金などの金銭債権の差し押さえと比べて、手続が複雑で手続費用も高額となる可能性があります。そのため、まずは給料や預貯金の差し押さえを検討すべきでしょう。
解説
1.不動産の差し押さえとは
不動産の差し押さえは、強制執行の一つの方法で、相手の所有不動産を差し押さえ、強制競売(強制的に売却するということです)を行う手続です。
強制競売後、不動産の購入者が支払った代金の中から、養育費を回収することになります。
2.不動産の差し押さえのメリット・デメリット
不動産の差し押さえのメリット・デメリットは、次のとおりです。
2-1.メリット
①回収額が大きい
不動産は、一般的に高額な財産です。そのため、相手が価値のある不動産を所有している場合、その競売によって大きな金額を回収できる可能性が高いといえます。
②財産隠しが困難
預貯金等と異なり、不動産は法務局に登記されており、簡単には名義変更できません。そのため、不動産は他の財産と比べて、財産隠しが困難な財産といえるでしょう。
2-2.デメリット
①手続に時間がかかる
不動産を差し押さえて強制競売し、売買代金から養育費を回収するまでは、少なくとも半年以上かかることが一般的です。不動産の評価や競売手続に時間がかかるためです。
②高額の予納金が必要
不動産の強制競売を申し立てる場合、裁判所に予納金を納める必要があります。その金額は、不動産の内容や裁判所によって異なりますが、名古屋地方裁判所の場合、原則70万円となります。
3.住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っている場合、通常は住宅ローン会社(又は保証会社)が不動産に抵当権を設定しています。
抵当権とは、不動産が競売になったときは、優先的に売却代金から債権を回収できる権利のことをいいます。
そのため、住宅ローンが残っている不動産の競売を申し立てても、競売手続での買受可能価額(売却基準価額の8割で、市場価格より大幅に低い金額となります。)が住宅ローンの残額と手続費用の見込額の合計額を下回る場合、原則として競売手続が取り消されます。
買受可能価額が住宅ローンの残額と手続費用の見込額の合計額を上回る場合には、不動産の差し押さえが可能です。
もっとも、競売手続での買受可能価額や住宅ローンの残額はわからないことが多いので、弁護士に依頼して調査する必要があります。
不動産の価値が住宅ローンの残額を大幅に上回る場合には、不動産の差し押さえを検討すべきでしょう。
- 養育費の強制執行(差し押さえ)についてさらに詳しく知りたい方は、養育費の強制執行のよくあるご質問をご覧ください。
- 養育費の強制執行(差し押さえ)の申立てを弁護士に依頼されたい方は、名古屋の弁護士法人中部法律事務所の養育費の強制執行・差押えのサービスをご覧ください。
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