A.養育費を調停調書や執行認諾文言付公正証書等により取り決めていれば、裁判所の財産開示手続を利用することができます。
なお、財産開示手続は、あくまでも相手の財産情報を取得する手続であり、養育費等を請求する手続ではありません。
そのため、養育費を請求するためには、この手続によって相手の財産に関する情報を得た後、別途、その財産に対して、強制執行を申立てる必要があります。
目次
解説
1.財産開示手続とは
財産開示手続とは、債務者を裁判所に呼び出し、その所有する財産(不動産、預貯金、株式、有価証券等)を開示させる手続です。
2.2020年4月1日の法改正により変わった点
財産開示手続はこれまでもありましたが、その実効性を確保するため、2020年4月1日の法改正により、次の点が変わりました。
債務名義の範囲が拡大され、仮執行宣言付支払督促や強制執行認諾文言付公正証書でも申立てができるようになった
債務者が出頭しなかったり、嘘を言った場合は刑事罰を科すことができるようになった
この改正により、養育費を取り決めた強制執行認諾文言付公正証書(法改正前に作成された公正証書を含む)により、財産開示手続を利用できることになります。
3.財産開示手続の申立先、手数料、手続の流れ
財産開示手続を行うためには、債務者の現在の住所地を管轄する地方裁判所に申立てを行います。申立て手数料は、1件につき2,000円です(民訴費用法3条別表第1の11の2イ)。また、数千円程度の予納郵券が必要となります。
財産開示手続の大まかな流れは下記のとおりです。
①債権者が裁判所に財産開示手続の申立てを行う
②裁判所が申立内容を認めれば、財産開示手続を実施する決定をする
③裁判所が財産開示期日を指定し、債権者と債務者(相手方)を呼び出す
④財産開示期日(非公開)で、債務者(相手方)が自己の財産に関する情報を開示する
なお、債権者及びその代理人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、債務者(相手方)に対し財産状況などを質問することができます。
4.財産開示手続を申し立てることができる人
財産開示手続を申し立てることができるのは、執行力のある債務名義(確定判決や調停調書、(執行認諾文言付)公正証書等)等を有する債権者です。なお、「執行力のある」とは、これにより強制執行ができる効力を有していることをいいます。
5.相手方が応じない場合の罰則
法改正前の制度では、債務者が出頭しなかったり、嘘を言った場合の罰則は、30万円以下の過料でした。
しかし、法改正により、罰則が刑事罰(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)となり、相手方が応じない場合のペナルティーが重くなっています。
これにより、財産開示手続の実効性が担保されることになりました。
6.財産開示手続後の養育費の請求
財産開示手続によって相手の財産が判明した場合、別途その財産に対して、強制執行を申立てる必要があります。財産開示手続は、あくまでも相手の財産の情報を得るのみで、強制的に回収する手続ではないためです。
強制執行は、例えば、不動産であれば強制競売の申立て、預貯金であれば債権差押命令の申立てを行います。
強制執行によって相手の財産を差し押さえた上で、その財産を換価するなどの方法で養育費を回収することになります。
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