養育費とは、未成熟の子供の養育に必要な費用であり、離婚した夫婦の間(または婚姻せず認知した父母の間)で、未成熟の子供を監護していない親が監護している親に対して支払います。
養育費の基本的な考え方
養育費の前提となっているのは、親の子に対する扶養義務です。親は子供の生活の面倒を見、育てる義務を負っています。この義務は親子関係という自然的な事実から発生しており、法律上の親権者であるかどうかにかかわりなく、親である限り認められます。
もちろん、生涯にわたって面倒を見なければならないわけではありません。子供が成熟し、自分の力で収入を得て生活していけるようになるまでです。そうなる前の子供を「未成熟子」といいます。
このような未成熟子の養育にかかる費用は、婚姻生活が継続している間は夫婦が協力して分担しています(婚姻費用の一部となります)。
しかし、離婚となると、未成熟子の監護をする親(監護親)とそうでない親(非監護親)に分かれ、家計も分離します。そこで、そのままでは費用負担が監護親に集中してしまうことになってしまいます。これを非監護親にも公平に分担してもらうために、非監護親が負担するべき養育費の額を取り決め、非監護親から監護親に対してそれを支払う約束をするのです。
なお、子供自身が親に対して扶養を請求することもできますが、この場合は養育費とはいわず、扶養料の請求といいます(民法877条)。
養育費に関する民法の条文
民法には、766条に養育費に関する定めがあります。
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第766条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
第1項の「子の監護に要する費用」が養育費のことです。離婚をする際に夫婦の間に未成熟子があるときは、その養育費についても定めなければならないこと、そしてまずは夫婦の協議による合意で定めるべきことを規定しています。
第2項では、協議をしても合意に達しないときや、そもそも協議ができない場合には、家庭裁判所に決めてもらえることを規定しています。その手続きは、具体的には①調停と②審判になります。
第3項は、一度決めた養育費を家庭裁判所の審判で変更することもできることを定めています。
養育費の取り決め例
たとえば、次のような取り決めが行われます。
A(元夫)は、B(元妻)に対し、●年●月●日からC(子供)が成人するまでの間、Cの養育費として1ヶ月◯万円を毎月末日限り支払う。
支払いの始期と終期を定め、金額を確定し、支払い方法も決めるのが基本です。
調停や審判で定める場合には、裁判所がこのような支払条項を作成し、調停調書ないし審判書に記載します。
協議で定める場合には内容は自由ですが、万が一相手方が不履行をした場合を念頭においておくべきです。理想は、執行受諾文言付公正証書を作成しておくことです。そうでない場合でも、履行確保が少しでも容易になるよう、できるだけ内容を明確に記載しておくことが大切です。
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