次のような問題があるので、利用には慎重になっていただきたいです。
①弁護士に回収を依頼するのと比べて割高になることがある。
②弁護士法違反(非弁行為)の可能性がある。
目次
1.養育費保証の仕組み
養育費保証サービスは近年新たに登場した事業スキームで、基本的に次のような仕組みとなっています。
①養育費請求権者と保証会社が保証契約を締結する。
②保証会社が養育費請求権者に対して養育費を立替払いする(保証債務の履行)。
③保証会社が養育費義務者に対して立替払い分を請求する(求償権の行使)。
これに加えて、養育費義務者側とも保証委託契約を締結する形態も見られます。登場して間もない分野であることから、サービスを提供する事業者によるバラつきも大きいようです。
2.養育費保証のメリット・デメリット
養育費請求権者としては、不払いのリスクを比較的手軽にカバーできるというメリットがあります。不払いがあっても早期に立替払いを受けることができ、回収の手間をかける必要もないためです。
最近では、自治体が養育費保証サービスの利用に助成金を出して支援する動きも増えてきているところです。
他方で、養育費保証サービスには以下のようなデメリットが考えられます。
(1)保証料がかかる
不払いのリスクを保証会社が肩代わりするわけですから、その分の対価が必要になります。初回契約時にかかる保証料と、月々発生する保証料に分かれている形が多いようです。
(2)保証期間が限られている
養育費支払義務が続く間ずっと保証してくれるわけではなく、1年や2年など期間を区切り、更新の際には再度保証料が必要になる形が多いようです。
(3)債務名義が必要とされることがある
債務名義とは、判決、審判、調停、公正証書などの直接強制執行に用いることができる書類のことです。単なる合意書は債務名義に当たりません。債務名義がないと回収には手間がかかり、回収できないリスクも高まります。保証会社は最終的に求償権を行使して立替払いした養育費を回収しなければならないため、ある程度回収可能性の高い債務名義ありのケースだけを取り扱うこととしている例もあります。
(4)不払いが発生してからでは利用できないことが多い
不払いがあるということは、回収コストが大きいということです。また、不払いにより債務不履行となってからでは、後述の非弁行為に該当するおそれがより強いため、利用を制限しているものと思われます。
3.養育費保証の問題点
(1)養育費請求権者にとってのデメリットの多さ
まず、そもそも債務名義のある事案であれば、保証会社を介さずに自分の債権として回収することも比較的容易です。わざわざ保証会社を入れることで、保証料の額によっては、弁護士に依頼するよりも割高になる可能性もあります。弁護士に依頼した場合の費用と、保証料(更新料を含む)とを慎重に比較したほうがよいでしょう。
弁護士であれば、債務名義がない場合、これから取り決めをしたい場合、取り決めを変更したい場合、不払いがある場合、不払いの回収と将来の履行確保を同時に図りたい場合など、いろいろな場合に対応できます。
(2)弁護士法違反のおそれ
弁護士法には、次のような規定があります。
(譲り受けた権利の実行を業とすることの禁止)
弁護士法73条 何人も、他人の権利を譲り受けて、訴訟、調停、和解その他の手段によつて、その権利の実行をすることを業とすることができない。
養育費保証は養育費債権の譲渡という形をとってはいませんが、保証債務を履行して求償権を取得することが実質的に債権譲渡と同様のものと評価できるのではないか、その場合、本条に違反するのではないかという問題が指摘されています。
仮に弁護士法違反になる場合には、事業者の方でサービス継続が困難になり、結果として利用者にとって不利益となることが考えられます。