A. 話し合いで増額を請求することはもちろんかまいませんが、家庭裁判所での審判となる場合、監護親(養育費を受け取る側の親)や子供の希望で私立の学校に進学するからといって、増額が認められるとは限りません。
養育費を決めたときに私立への進学を想定しておらず、かつ、義務者(養育費を支払う側の親)が私立への進学を承諾しているか、暗黙に了解している場合、または義務者の教育歴や生活レベルに照らして私立への進学が相当といえる場合に増額が認められます。
解説
1.私立の学費と養育費
養育費の算定表には平均的な公立の教育費がすでに含まれています。14歳までの子供については公立中学の学費、15歳以上の子供については公立高校の学費の統計データを用いた計算が行われているからです。
それを超える私立の学費については、公立の場合との差額を算定表の金額にプラスするべきかどうかという問題になります。当事者どうしで合意して決める分には自由ですが、家庭裁判所の審判で決めることになる場合には、以下のように一定の条件があります。
2.最初に養育費を決める際の条件
まず、離婚の際または離婚後に初めて養育費を取り決めるときに、こうした私立の学費を加算できるかどうかについては、その分を義務者(養育費を払う側)が分担することが相当といえるかという観点で判断されます。どんな高額な教育も子供のためだから分担すべきだということにはならないためです。その親子の実情に応じてどこまで分担すべきかを検討しなければなりません。そのための基準となるのが次の点です。
①義務者が承諾していた(または暗黙に了解していた)
②義務者の教育歴や生活レベルに照らして相当な教育内容といえる
このいずれかが認められれば義務者も分担すべきとされ、公立との差額の半分程度を養育費に加算することができます。
3.養育費を増額する場合の条件
一度決めた養育費の金額を変更するには、事情の変更があったといえるかが条件となります。たとえば養育費を決める際に子供は受験目前で志望校も私立に決まっており、お互いそれを了解しながら金額を決めたのに、そのとおり私立に入ったからといってすぐに増額を請求するのは認められにくいでしょう。
事情変更とは、養育費を決めた際に想定していなかった事情の変更が生じ、そのままでは著しく不公平な状態になっているといえることです。
そして、最初に養育費を決める場合と同様に、義務者による分担が相当といえることも条件です。つまり、私立の学費のために養育費の増額が認められるためには、基本的に事情の変更と分担の相当性の両方が条件となります。
4.協議条項の有効性
養育費を決める際には私立かどうかまで話し合えなかった、あまりにも先のことで考えが及ばなかった、ということはあると思います。考えに入れていなかったのならば、事情変更が認められる余地はありますのであきらめる必要はないです。
ただ、できれば最初にいろいろな可能性をふまえて協議条項を入れておくとよいです。「〇〇が私立学校に進学した場合、養育費の金額について、別途協議する」などです。
こうしておけば当初決めた養育費の前提にされていないことが明らかとなって事情変更は認められやすく、かつ義務者が私立への進学について反対していなかったことも示す効果があるため(もっとも、このような協議条項だけで義務者の承諾が100%認定されるようになるわけではありません)、増額の可能性は上がります。
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