A.養育費は支払ってもらえます。
もっとも、破産の手続きが始まる前に未払いになっていた分については、破産の手続き中は支払いを待たなければならず、給与の差し押えなどの強制執行もできなくなります。手続きが終われば、また請求できるようになり、強制執行も可能です。未払いではなく月々発生していく分については、破産後もそれまでの取り決めどおりに発生し、通常どおり支払義務があります。
解説
1.自己破産とは
(1)破産の仕組み
破産は簡単に言うと、自分の財産から債務を弁済しきれなくなった債務者について、その全財産を調べ、各債権者に公平に分配する手続です。分配するほども財産がない場合には、破産の手続きは開始と同時に終了することがあります(同時廃止)。
債務者が自分で破産手続きを申し立てる場合を自己破産といいます。
(2)免責によって借金ゼロに
破産した債務者は、財産を分配しても弁済しきれなかった債権について責任を免除してもらう免責許可を申し立てることができ、通常、破産手続きとセットで申し立てられています。
しかし、法律上、免責できない債権(非免責債権)があります。養育費も非免責債権の1つです(破産法253条1項4号ハ)。
2.養育費債権の扱い
(1)未払いがある場合
ア 破産手続き中
破産手続が始まった時点で未払いの養育費がある場合、それは他の借金と同じように現状の財産の中から公平に分配を受けるべきものとして扱われます(破産債権)。
破産手続きの配当ではごく一部しか回収できないのが普通ですが、手続き中はやむをえません。債権者はすべて公平に扱われなければならず、1人だけ優先的に弁済してしまうと偏頗弁済といって、免責自体が認められなくなる場合もあるためです(同法252条1項3号)。
また、破産開始決定時に存在した財産に対する強制執行も破産手続き中は申し立てることができず、手続きの開始前に申し立てていたものは中止になります(同法42条)。
イ 破産手続き終了後
養育費は非免責債権なので、破産手続きで配当が受けられなかった残額についても、請求権が残っています。手続き終了後は、再び請求して支払いを受けたり、強制執行を申し立てることができます。
もっとも、破産した方は基本的に破産前の財産はなくなっているはずですから、強制執行ができる場合は限定されるでしょう。
(2)月々発生していく養育費
破産債権として公平な取り扱いの対象になるのは、破産開始決定のときに存在した債権だけです。未払いがなかった場合や、あってもその時点以降にまた月々発生していく分の養育費については、通常どおりに支払いを受けることができます。
破産したからといって、養育費の取り決めが自動的に無効になったり変更されたりすることはありません。
もっとも、相手が破産によって失業した場合等、収入が大幅に減少する場合、相手から養育費の減額請求や調停申立てがなされることは十分考えられます。養育費を取り決めた際に想定していなかった大きな収入減があれば、事情変更と認められる可能性があります。
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